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生ミヒャエル・ギーレン体験記

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生ミヒャエル・ギーレン体験記

ミヒャエル・ギーレンという指揮者の名前をよく聞きます。でも私はCDも実演も聴いたことがありませんでした。

ウィキペディアによると、1927年生まれのドイツの指揮者で現代音楽を得意とし、精妙な音楽を聴かせるとある。マーラーのCDの紹介などを見ると、構造的に聴かせるので発見があるとのこと。

ひょっとして、ティルソン・トーマスとアプローチが似ているのか?もしかしたらトーマス以上の発見があるかもしれない。

という訳で、ミヒャエル・ギーレン指揮ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(旧ベルリン交響楽団)のマーラー交響曲第1番のコンサートが、マーラー・イヤーのヨーロッパをゆく第2弾。

コンツェルトハウスの建物は、旧東側にありがちな重厚長大なもの。ホール周辺の雰囲気はとてもよい。

コンツェルトハウス

ここでもマーラー特集

コンツェルトハウスのマーラー

マーラー交響曲第1番

ギーレンは今年84歳なのですが、立ち姿もスッとしており、歩き方も実にしっかりとしたもの。どう見ても70歳そこそこ。

テンポの構成は、第1楽章と第4楽章が遅く、第2楽章と第3楽章がサクサク進むという今までに聴いたことのないものでした。1楽章の出だしの部分はただでさえもアンサンブルが難しいのに、テンポを遅くすると難易度が何割増しにもなる。最初聴いたとき、「このオーケストラ、ひょっとしてマルレ・オケ入っている?」と頭をよぎりましたが、オーケストラはその後持ち直して大丈夫でした。

マーラーの構造的なアプローチという点で見ると、ティルソン・トーマスはあらゆるパーツにキャラクターづけをして、その組み合わせで聴かせようとするのに対し、ギーレンは純粋音楽的。確かに今まで気づかなかった対旋律が浮かび上がったところが2か所くらいありましたし、4楽章のフーガも入りをはっきり出していました。

一番印象に残っているのは、3楽章の中間部の弦。シンプルな歌い口が非常に美しかったです。

オーケストラの音は、トゥッティになると少し濁ってクリアな響きではありませんでした。これはホールのせいかもしれません。私は良いオーケストラかどうかはトゥッティで鳴ったときの響きのまとまりで決まると思っていますが、音が飛んでしまって平たいような気がしました。

それでもこの曲は、最後にホルンが立つと感無量になり、すべてが丸く収まって終わる。ギーレンは終わりの「タ、タン」を遅くしてフィニッシュ。巨匠だ。

曲が終わると盛大なブラボー。彼が観客から大きな支持を集めていることも(主席客演指揮者)、尊敬されていることも十分に伝わってきました。

コンツェルトハウスの観客

今日何に驚いたかと言えば、コンツェルトハウスのお客さん。90%くらいが60歳代以上で占められている印象。年がら年中ヤンガー・ジェネレーションのオーディエンス開拓について議論しているアメリカのオーケストラでもここまでは行かない。

ホールに置いてあったリーフレットを見ると、このオーケストラも教育プログラム(劇と音楽を組み合わせたようなもの)にがんばっているようでしたが、10年後にはどうなるのだろう?と心配。

昨日のベルリン・フィルとは客層がかぶらないようで、オーケストラ毎の棲み分けがきっちりなされているのだろうと感じました。

コンサートマスターは日本の日下紗矢子さん

今日のコンサートマスターは日下紗矢子(くさか さやこ)さんでした。いろんなところで日本人が活躍しているのだなあとうれしかったです。

日下さんのブログ

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今日のコンサートでは、前半にVeronique Gens のソプラノでベルリオーズの「夏の夜」も演奏されました。途中曲が終わりかけたところで幼児が派手にむずがるというハプニング。最近は少しでも観客を逃したくないという開催する側の事情があるのでしょう、明らかに鑑賞に適さない子どもを連れていても、そのまま入場させるケースがほとんどですが、今日のは未だかつて体験したことのないレベルの大声でした。歌手は笑っていましたが(ギーレンは無視)。

(2011.5.15)

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