バーンスタイン・フェスティバルのオープニング・ガラ
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バーンスタイン・フェスティバルのオープニング・ガラ
レナード・バーンスタインの生誕90年とニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督就任から50年を記念し、9月から12月にかけてニューヨーク中で繰り広げられるバーンスタイン・フェスティバル。
そのオープニング・ガラ・コンサートが、カーネギーホールのシーズン・オープニングに合わせて行われました。
この記念すべきイベントを飾るのは、フェスティバルを主催するニューヨーク・フィルではなく、マイケル・ティルソン・トーマスとサンフランシスコ交響楽団。
それだけ、ティルソン・トーマス抜きにバーンスタインは語れないということなのでしょう。
このコンビにしか出せない世界
コンサートの1曲目は、ウェストサイド・ストーリーからシンフォニック・ダンス。
これがまさにアメリカン・オーケストラ。ジャズやラテンなどの様々な要素が混ざり合って一つの世界を作り上げるセンスは、他ではまねができないのではないでしょうか。
そして徹底的に練り上げてある。この曲をマーラーの交響曲を演奏するときと何ら変わるところなく神経をはりつめて演奏しているのは、世界中でこのコンビだけだろうと思います(ただし、のっけから「マンボ!」をお客さんに言わせるところもMTT)。
【追記】
例年、シーズン・オープニングは国家斉唱で始まるのが慣例だそう。ウェストサイド・ストーリーで始めたということは、バーンスタインの音楽が、アメリカ人皆の心を一つにできるのだというMTTのメッセージだったらしい。
ガラでも曲を分析して語るMTT
2曲目は、バーンスタインが最後に書いたオペラ「A Quiet Place」から。演奏前にティルソン・トーマスがバーンスタインの人となりと音楽について話をし、多くの曲の最後が静かに問いかけで終わることや、A Quiet Placeにもウェストサイド・ストーリーと非常によく似た動機が用いられていることを、音楽を抽出して聴かせていました。
曲が終わって客席に挨拶したとき、ティルソン・トーマスがバーンスタインのスコアを掲げて見せた姿が印象的でした。
曲目:
Prologue to Act 1
You're Late (トーマス・ハンプソン)
Morning, Good Morning (ドーン・アップショウ)
Postlude to Act 1
着物でいると、カタコトの日本語で話しかけられます。
豪華競演
休憩後のコンサート後半は、一転華やかに、まずはブロードウェイ・スターの Christine Ebersole が登場し、On the Town から I Can Cook, Too
ヨーヨー・マのチェロで、ミサから Meditation 1番
ドーン・アップショウのソプラノで、Trouble in Tahiti から What a Movie
アップショウは、昔ザルツブルグ音楽祭のハンペ演出のフィガロで、スザンナを歌っていたときの印象が私は強く残っているのですが、すっかりベテランの風情で、どんな表現もお手のものという感じでした。
ティルソン・トーマスは、レチタティーヴォで歌詞にあわせてパントマイムのようなことをしていましたが、あれで吹き出さなかったアップショウは、さすがプロ。そしてトマシェフスキー以来、すっかり芝居づいているMTT。きっと役者になっても成功できたことでしょう。
その後、 トーマス・ハンプソンとヨーヨー・マによる Songfest から To What You Said…
二人とも素晴らしかったです。
オーケストラによる Fancy Free から Danzon と続いて
ジュリアード・スクールの学生たちが、ミュージカルから抜け出てきたかのような衣装と振り付けで繰り広げた、ウェストサイド・ストーリーから Gee, Officer Krupke
フィナーレは出演者全員で On the Town から Ya Got Me
ティルソン・トーマスによると、ガラで一番重要なことは、全員参加である。したがって、客席もしっかり役割を果たすようにということで、あの曲のポイントである手拍子のところと、「Ya Got Me」のあいの手をお客さんも一緒に参加。
ティルソン・トーマスも歌手二人目の部分を歌い(何だか歌手の間に入ってなじんでいました)、間奏では、ヨーヨー・マによる即興も入りました。
最後、「Ya Got Me」のフレーズがエンドレスで続いたのち、一番終わりに歌詞が
「Happy Birthday, Lenny, Big daddy!」
となり、MTTの決めが入ってThe END。
手拍子好きの私としては、Ya Got Meの手拍子ができて大満足。
師匠は偉大だった
しかし、今日のコンサートで一番印象に残ったことは、バーンスタインの音楽が「こんなにも完成度が高かった」という驚きに尽きます。
バーンスタインが自分で指揮したら、おそらくこんな目の覚めるような発見にはならなかったのではないでしょうか。やはり第三者の視点が加わることで音楽に光があたるのだと思います。
バーンスタイン万歳なお祭りというよりもずしりと重い、非常にティルソン・トーマスらしいコンサートでしたが、来た人は皆、アメリカにはこんな素晴らしい音楽があったと自信を持ったのではないでしょうか。
あっという間で、たくさんある作品それぞれのさわりしか味わえなかったので、一つひとつの作品を通しで聴きたいと思いました。
それにしても常々思うのですが、ガラ・コンサートは、大量の金持ちがやって来るので、観客のレベルが下がる(彼らは必ずしもマナーがスマートだったりはしない)。世の中うまくできているのだと思います。ティルソン・トーマスなんて金持ちあしらい慣れていて、彼らがいつまでも席につかずに社交していてもお構いなしに出て来て話始めて、あっという間に座らせてました。「席にお着きください」なんてまどろっこしいアナウンスはしないのです。
(2008.9.24)
追記:ニューヨーク・タイムズで写真を見ることができます
Ya Got Meの写真とコンサートのレビューが載っています。
こちら
コンサートから受けた印象は、評論家の方も同じだったようです。
ティルソン・トーマスが歌ったことについて、しっかり記事に書かれていました。
マゼールがニューヨーク・フィルで歌うなんて想像できるか?
だそうです。いや、歌だけじゃなくて、踊りもやるんです。。。
やっぱり[北]カリフォルニアは違う星なのでしょうか?
記事では、歌をほめてありましたが、私はカラオケ歌い込んでる巷のお父さんたちよりもうまくないところがミソなのだと思います。
Tag: コンサート