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ハイティンク&シカゴ交響楽団を聴く

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ハイティンク&シカゴ交響楽団を聴く

いよいよご長寿巨匠二枚看板の一人、ベルナルト・ハイティンク登場。メインの曲はマーラーの交響曲第1番<巨人>。

シカゴ

MTT&SFS盤を何度も繰り返して聴いた挙句に、今やあらゆるディテイルについて、「MTTはここはこうやっている」と正確なテンポで説明できてしまう私。さらにテンシュテット&シカゴ響のタイタンのビデオも累計すると100回くらいは観ているので、かなりのすり込み。

一方の夫は、今までの体験から、「ハイティンクはこう来る」とハイティンク予想を展開。

というわけで、ハイティンクの解釈やいかに?

Music Conversations

開演1時間前のmusic conversations、今日は2曲目にやるThe Nerda Songsの作曲家であるリーバーソンとシンフォニーのアーティスティック・ディレクターの方のトーク。

音楽的なバックグラウンドとか、今の作風に至った経緯などの話が中心。お客さんは、オーケストラフロアの3〜4割くらいといったところ。

今日の演目はマーラーだったので、シカゴのマーラー協会が別会場で例会のようなものをやっていました。アメリカではマーラーの人気がとても高いみたいです。昨年メジャーオーケストラがアンケートをやったときも、プログラムの好みを聞く組み合わせにやたらマーラーが入っていました。

シンフォニーのアッシャーさん(ご案内係)はとても親切。「あなたたち初めて来たの?だったら、あそこに行くと一番眺めがいいわよ」等々、いろいろ教えてくれる(夫は、中学高校のクラシック音楽を聴き始めた頃、シカゴ響に憧れていたとかで、初めてやって来たシンフォニー・センターに挙動がクラ少年だった。本人によると、バイロイトに行ったときと同レベルの興奮を覚えたらしい)。シカゴ響には、その手の憧れてやって来るお客が多いのでしょう。

コンサート

登場したハイティンクは、歩き方をはじめ、所作の一つひとつが惚れ惚れするくらい若々しい。

1曲目ラヴェルの古風なメヌエット。

ケント・ナガノの日よりは、アンサンブルが揃っているような?まずは手堅くといった感じ。

2曲目、リーバーソンが奥さん(亡くなった歌手のロレーヌ・ハント・リーバーソン)に贈ったラブ・ソング「The Nerda Songs」。

曲も歌手も悪くないのですが、歌詞がスペイン語。日本人と違い、アメリカ人は世界中どこでも英語で通用して当たり前な環境のせいで、外国語の歌詞だと何と言っているのか非常に気になるらしい。ということで、今回も皆一斉にプログラム冊子を開き、歌詞のページを探す。したがって、そこかしこからカサコソカサコソうるさい。

ここはサンフランシスコでやっていたように、事前に歌詞の内容を皆に話しておく必要があったのではないでしょうか?プレ・トークをやっていたけれど、歌詞の内容には触れていなかったし、参加していた人も少なかった。

私でさえも、皆がプログラム冊子を探し始めると予想がつくくらいなんだから、シカゴ響の人もわかっているのでは?実際、プログラム冊子には、ページの端に「ページは静かにめくりましょう」といちいち書いてあります。お客さんが皆その調子だから、せっかくの演奏も、演奏者が遠く感じられました。

曲目:
Nerda Songs
Peter Lieberson
Kelley O'Connor, mezzo-soprano

そしていよいよマーラー。

ホルンがずらっと並んでいるのを見るだけで壮観だし、音もやっぱりシカゴ響という感じで、ホルンの音だけ書き取れちゃうくらいよく通る。

ハイティンクは、常に中庸、奇をてらわず、小細工を弄せず。夫のハイティンク予想がかなりの確度で的中していくところがおかしい。

4楽章も中庸を貫くハイティンク。最後のホルンの聴かせどころで、ハイティンクが維持していたテンポにホルンが我慢しきれないという感じでちょっと飛び出し、一瞬弦の伴奏とずれたのですが、飛び出した当のホルンの音が全員揃っていたのには、さすが!と感心しました。

シカゴ響は、弦は取り立てて違うという印象は受けませんでしたが、木管も金管も、個人芸のレベルが傑出しています。

他方でアンサンブルの精度という点では、サンフランシスコやロサンゼルスなどを聴いてしまうと、今回はリーダー不在(ハイティンク+ブーレーズで年間9週間だそう)ということを感じざるをえませんでした。

個々のプレーヤーに技量の差があるにしても、明確なリーダーシップのもとに一つになっているパワーを凌ぐほどその差が開いているかというとビミョウ。

今後、ムーティを音楽監督に迎え、そのあたりをどう展開していくのか楽しみです。ムーティは統率力があるから、アンサンブルの完成度という点は、またたく間にクリアするのではないでしょうか。キャラもシカゴに合っているし、華もあるし。

今回シカゴに来て、どの席を買うべきかよくわかったので、また来たいと思います。

それにしても、今日のコンサートで一番印象に残ったことは、「この人たち、これで弾いてて楽しいのかな?」と思ったこと。私が奏者だったら、これでは乗れないと思ったし、何か楽しそうに見えなかった。

ブラボー言っている人もたくさんいたので、そう思ったのは私だけかもしれません。

(2008.5.1)

シカゴ交響楽団の工夫へ続く

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Tag: コンサート

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