ティルソン・トーマスMTTのマーラー交響曲第9番
マーラー交響曲第9番
1974年にティルソン・トーマス(MTT)が、初めてサンフランシスコ交響楽団を指揮したのもこの曲。
聴きどころ
アンダンテ
第一楽章で指摘したいのは、まずは呈示部冒頭のテーマ部分です。何度も出てくる「タラ」というスラーのかかった音型の表現に神経が行き届いていて、これが音楽のうねりを出す要素として、重要な役割を担っていると思います。
そしてそれらが展開していくのですが、46小節で最初のピークに持っていくまで、長いスパンを一つのつながりとして表現しています。そこから次の小節でストンと落下する持って行き方まで、本当に練られている。
揺り戻しの幅を含め音楽のうねりが、スケール大きく描かれています。
3拍子の扱い
ティルソン・トーマスのマーラー全般に言えることですが、3拍子の扱いが非常にうまい。
この2楽章でも、民族的な舞踊のリズムでの3拍子の1拍目の足を踏み込む感じが絶妙です。
多くの演奏では、10小節目の最初にアウフタクトでテーマが入る部分など、部分的にがんばっている印象を受けますが、ティルソン・トーマスは、出だしのレントラーだけでなく、途中ワルツになってもまたレントラーに戻っても、ずっと3拍子の舞踊のリズムが一貫して流れていることを感じさせます。
ロンド・ブルレスケ
3楽章は何と言っても、ブレないリズムによる高精度アンサンブルが特徴です。
これがあるから、対位法が浮き上がるのでしょう。
特にコーダの617小節ピウ・ストレットから、ティルソン・トーマスらしいスピード感で突き抜け、曲の最後もMTTのアクションが想像つくくらい決まったところで、アダージョに入ります。
アダージョ
終楽章はストリングスのサウンドが決め手ですが、分厚い響きでぐいぐい引っ張る演奏を聴き込んだ方にとっては、このティルソン・トーマス盤の演奏は線が細く聴こえるかもしれません。
そのかわり、透明感や慈愛など、表情を変える極上の美を堪能できます。最後の死んで行くような部分も集中力がものすごく、壮絶なPPPPです。
この演奏は2004年の録音ですが、今のティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団コンビだったら、このアダージョはまた違う表現になるのではないかという気もします。
なぜなら、彼らはその後、獲得した1千万ドルの寄付を弦楽セクションを充実させるために使うと発表し、最近のコンサートではとみに弦楽セクションの進境著しいように感じられるからです。
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【追記】弦楽器を調達したそうです。どうりで練習したとかMTTがトレーナーだとかいうレベルではない、もっと組織で何かしたのではという気がしました。
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しばらく彼らがマーラーをコンサートで取り上げるのはお休みみたいですが、次の機会を楽しみに待つことにします。
(2008年10月記載)
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