ティルソン・トーマスMTTのマーラー交響曲第6番<悲劇的>
マーラー交響曲第6番<悲劇的>
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のマーラー・レコーディング・プロジェクトの記念すべき一作目。
今までにない切り口のマーラー演奏を世に出すという気概と気合にあふれています。
このディスクの聴きどころ
音楽の構造
ティルソン・トーマスのマーラーを聴く楽しみのひとつに、音楽の構造に耳がいくことがあげられます。
この作品でも何度も出てくるキー要素の一つ「ダン、、ダン、、ッダ、ダン、ダン、ダン」をはじめ、構造的にかっちりした中でいろいろな要素が浮かび上がるので、聴いていて気づきがあります。
この音楽の構造把握が確かであるという観点でマーラー演奏を見ると、例えばアバドなども挙げることができると思います(MTTとアバドには、クーセヴィツキ賞、ロンドン響首席指揮者、海外で Mahlerian で通っているという共通点がある)。スコアから掴むセンスみたいなものは、アバドとMTTは似ているのではないでしょうか。そこから奏者のポテンシャルにお任せするとアバドになり、白髪になるまで練り上げるとMTTになる(!)。
余談ですが、私にはアバド新盤(ベルリン・フィル)などは、「余計なことをするくらいなら、何もしない方が良い」と言っているように聴こえます。
テンポはブレない。でも揺れる
ティルソン・トーマスの音楽は、テンポの推進力が特徴の一つですが、他方で彼のアゴーギクの幅は、一般的な演奏よりもかなり広いと思います。この二つが両立しているのです。
これが顕著に現れるのが、スケルツォの183小節目からの部分。思いきりアクがある表現に組み合わされる3拍子のリズムは聴きどころだと思います。
ハンマーの音
鮮やかな録音も話題になったこのディスク。4楽章のハンマーの音も、非常にデッドかつ衝撃的に再現されます。
こういう効果音的な決まりどころは、同じくマーラーを出しているジンマンのシリーズもよく録れているいるので、6番をどう出してくるか楽しみ(追記:ジンマンの6番聴きましたが、ハンマーは特別印象に残らなかったです)。
オーディオ的観点から聴いてみようという方へ
私の周りのオーディオを極める人生を選択した諸氏によると、「MTTの6番は低音が甘い」そうです(オーディオ的に聴いていない私にはわかりません)。
彼らの指摘によると、リリースが最近のものと比較すると、録音技術が日々進化していることに基づく差があるとのこと。したがって、オーディオ的観点でティルソン・トーマスのマーラーを聴いてみようかという方には、5番とか大地の歌がおすすめです。
ついでに言うと、後になればなる程、音楽の練り上げにも拍車がかかっています。
ちなみに私の「良いオーディオ」の基準は、MTTのマーラーをかけて、 SF Symphony の実際のサウンドのイメージ通りに再現されるかです。オーディオ・オタクの方からすれば、「SF Symphony のイメージじゃない」と言われても意味不明ですが、うちの機器たちには不思議とイメージが伝わったようであります(?)
(2008年10月記載)
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