ティルソン・トーマスMTTのマーラー交響曲第4番
マーラー交響曲第4番
4番は、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のマーラーの中で、買った人が少ない方なのではないかと思いますが、コンビの良さが最大限発揮されている演奏です。
このディスクの聴きどころ
薫り立つエレガンス
曲全体のベースに、何とも言えない軽やかな優美さが流れています。フレーズのおさめ方ひとつとっても、それは貫かれています。
私はマリン・オルソップ(彼女は日本では話題になっていないが、海外では大活躍である)もシモーネ・ヤングも生で聴いたことはないのですが、女性指揮者の方は、概ね男性に劣らぬパワフルさは追求しても、美しさやたおやかさ、細やかさなどを前面に出そうとはしないような気がします。
そこへ躍り出たMTT。
ダークホースなのかブルーオーシャンなのか、とにかくぶっちぎりに美しさ、たおやかさ、細やかさを極めています。しかもビジュアル付き。
サンノゼ・マーキュリーも、ティルソン・トーマスの手の動きは白鳥みたいだと書くくらい。
途中でなくならない
3楽章では、フレージングを非常に大きく取っており、その一貫した流れが聴きどころの一つです。
普通は、途中でいろんな要素が出てくるうちに「何だっけ?」みたいになりがちですが、ティルソン・トーマスの演奏は、一本の線がコーダのクライマックスに向けてブレることなく通っています。
そして優美なだけではなく、分厚い響きや叫びのような音もあり、音楽のドラマがある。
この曲は、私が初めてサンフランシスコへ聴きに出かけたコンサートでも演奏していたのですが、本当にやっていました。
あの長さ(25分27秒)を集中力一つ途切れることなく、一本の線で聴かせるというのは、ものすごく難易度が高いのではないでしょうか。聴く方も集中力を要しますが、とにかく今のMTTからは気迫に気圧されるので、お客さんも集中力を保てるのだと思います。
声とオーケストラのブレンド
4楽章のソプラノは、Laura Claycomb 。
私はこのティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団盤を聴くまで、4楽章は声とオーケストラが交互に出てきて何だか落ち着かない曲だとずっと思っていましたが、このディスクを聴き、曲に対する見方が変わりました。
声とオーケストラがブレンドされた響きが素晴らしいです。
特に最後のコーラス。テンポも音量も落ちて、ハープが一定のリズムを刻む上に乗っかる声とオーケストラが、本当に天上の響きのよう。最後、ハープだけになる消え方まで、こだわりに満ちています。
(2008年10月記載)
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