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サンフランシスコ交響楽団の創立100周年ガラ・コンサート

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サンフランシスコ交響楽団の創立100周年ガラ・コンサート

2011年9月7日、サンフランシスコ交響楽団の創立100周年にあたるシーズンが開幕、100周年を祝うガラ・コンサートが開かれました。

デイビスホール

ホール入口にはレッド・カーペットが敷かれています。ホワイエの入口はこんな感じ。シャンパンがふるまわれます。

エントランス

お客さん

ホールに入ると、映像。サンフランシスコ交響楽団とサンフランシスコの街のこの100年を振り返るアーカイブ写真が、ホールの内装の縦のラインに合わせて流れていました(開始前と休憩時間のみ)。

映像

これまでは、ラジオでシーズン・オープニングのガラを聴いていましたが、毎年開始時間が遅れる。それもそのはず、8時の開演時間になっても全く始まる気配はなかったです。席についていた人は三分の一くらい。15分くらい経っても着席が終わらないところへMTTが出てきて、強制的にコンサート開始。

まずは、ナショナル・アンセム斉唱。すごくゴージャスな響きだったので、それを伴奏に歌えるなんて贅沢。

「ビリー・ザ・キッド」バレエ組曲

コンサートはコープランドから。マイクを持って話し出すMTT。「本日最初のチャレンジは、、」と言うから何かと思えば、

静かであることです!

静けさが重要な曲だと言っていましたが、100周年のガラでのっけから静かに聴けと言うMTT。彼はハレの場だろうが何だろうが、どうしても言わずにいられなかったのでしょう。このコンサートは、楽団の100年を振り返るドキュメンタリー・フィルムとセットでDVD化される予定ですが、ここはカット?(ちなみに観客の皆さん、自分のことを言われているという自覚がなさそうでした)

そこまで言っても最初はちょっとザワザワ感がありましたが、途中で静かになり、中間の静かな部分は、非常に効果が上がっていました。

広い空間性を感じる、風景が広がる演奏でした。人々のにぎわいみたいなものの表現も良かった。アンサンブル、特に木管のかけあいや金管の響き、弦の表現などが(いつも言うこと同じになってしまうけれど)練られていて、隅々まで表現されていました。

彼らのサウンドを聴いて、やはりホームで聴く方が、バランスやトータルな響きの点でずっと良いと思いました。

リストのピアノ協奏曲第1番

2曲目は、ラン・ランをゲストにリストのピアノ協奏曲第1番。ラン・ランを生で聴くのは初めてだったので、とても楽しみにしていました。

登場したラン・ラン。最近は髪の毛をツンツンさせていないので、さらに好青年度がアップ。もっとぷっくりしているのかと予想していましたが、スリムでした。

演奏はラン・ランの良さが出る選曲で、期待通りでした(前にSFSのガラでプロコフィエフの3番をやったときは、別にラン・ランじゃなくてもいいと思った)。

MTTは、ベースになるリズムを気持ち弾む感じでやっていました。

ラン・ランのピアノは、一つひとつに詩情がある。小さな音の細かいパッセージが美しかったです。そしてピアノからオーケストラに渡すときなどに、いちいち手の表現(しな?)がある。圧巻はトリルだけがずっと続くところ。顔が客席向くのです(もちろん顔の表情つき)。すごい。

オーケストラは、トライアングルが印象的でした。私が家でCDを聴いて「MTTはトライアングルへのこだわりがすごい」と言ったら、夫に「それ、スーパーツイーターのせいじゃないの?」と言われていたのですが、生で聴いてもトライアングルが目立つ。

スーパーツイーターのせいじゃなかった!

さらに、曲が終わってオーケストラ奏者を立たせたとき、MTTは一人だけ選んだのですが、それがトライアングルの人(パーカッションの首席)でした。やっぱり。。。トライアングル奏者を立たせているシーンというのも初めて見ましたが、トーマスらしい。

演奏を総括すると、聴き終わったときに超絶技巧しか印象に残らない演奏の対極で、この曲の超絶技巧以外の良さを掘り返したような、工夫にあふれた演奏でした。ラン・ランは、トーマスの路線に最大限合わせて、自分も出していました。それができるということは、実力があるということなのだと思います。

休憩時間は、ファンファーレ

今日のコンサートは、「新世紀へのファンファーレ」というタイトルだったのですが、休憩時間には、いつくもの隊がホワイエのいろんな場所で交互にファンファーレを鳴らしていました。

ファンファーレ

楽器につけた旗にも「新世紀へのファンファーレ」とある。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲

プログラムの後半は、イツァーク・パールマンをゲストにメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。

パールマンは登場するだけで、会場総立ちでした。

予想したよりも、テクニック面は危なげありませんでした。オーケストラはいつものコラボ調よりも、パールマンに合わせる感じ。ハーモニーがきれいで流れがよかった。

印象に残っているのは、3楽章の主題部分。ヴァイオリン・ソロとフルートが同じメロディを弾いているのが強調されていました。途中ホルンとヴィオラのカウンターメロディも非常にきれいでした。

ブリテンの青少年のための管弦楽入門

プログラムの最後は、ブリテンの青少年のための管弦楽入門。MTTによるイントロダクションがありました。セクションごと、楽器ごとに移り変わって登場するので、それぞれのプレイを聴いてほしいということと、最後のフーガがどうなるか聴いてほしいということ。

演奏は、その言葉通りのものでした。どのパートもミーティングでもしたのかというくらい、意思表明された演奏に仕上がっていました。

重要なコンサートにこの曲を選ぶケースはあまりないかと思います。理由を考えると、やはりオーケストラ団員それぞれにスポットライトを当てたかったということと、今団体演技の方はこれ以上やりようがないくらいのレベルまで来ていて、後課題があるのは、個人技を高めて、今のレベルの団体演技の中で、個人をもっと光らせていくという方向性。そういう意味でこの曲を選んだのでしょう。そして、教育や幅広い聴衆へ向けて活動していくということの現れでもあるのだと思います。

演奏後、ガラのチェアマン(寄付集めから会場のしつらえなど全ての陣頭指揮にあたった)の女性2人からトーマスに花束が贈呈されました。

最後はサプライズ

コンサートの最後はサプライズ。トーマスから、サンフランシスコ交響楽団がたくさん曲を委嘱し、長年共に歩んできたバークレー在住のベイエリアの作曲家で、素晴らしい同時代の作曲家であり友人でもあると、ジョン・アダムズを紹介。客席のアダムズを立たせていました。

曲は「高速機械で早乗り」(邦題のニュアンスがちょっと違うような、、)

トーマスは、奏者のセッティングが終わらないうちに始めようとして気がつき、「ショート・ライドするには準備が大変」とか言って場をつないでいました。

演奏はデジタル・アートとのコラボでした。おそらくユーチューブ・シンフォニーのときのObscura Digitalでしょう。映像が奥から手前(客席側)に流れる。何の映像かというと、

サンフランシスコの建造物でした!

サンフランシスコは建物に特徴があるので、うってつけの素材。くっついて建っている家(サンフランシスコの家はくっついて建っている)、高層ビル。色が変わって、チャイナタウンの門、ゴールデンゲートブリッジ、グレース大聖堂、シティ・ホールなどの名所もありました。

音楽が一定のリズムをベースに、途中変化していくつくりだから、映像の切り替えがそのタイミングでできて効果的でした。

この曲は、スペクタクルで派手な演奏もあるけれど、MTTは淡々としている。リズムのパルスの変化にずっとフォーカスしている感じ(前にエディンバラ音楽祭で聴いたときもそうでした)。

流れるデジタル・アートとの組み合わせは、スケールが大きくて素晴らしい。これはビデオで見るより、ホールで直に体験すると、予想よりもずっとクリエイティブだと感じるはず。

最後まで、とてもサンフランシスコらしいコンサートでした。

アンコールはなし。MTTの「さあ皆さん、パーティへ!」のかけ声でお開き。

コンサート全体を振り返ると、スターが出て華やかなお祝いというより、非常に真面目に創り込んだ音楽を聴かせる場でした。これまでやってきたことの成果を見せ、これからの方向性も感じさせるコンサートだったと思います。

当日の配布物。プログラム冊子と楽団の100年を振り返るミニ冊子。過去の音楽監督からのメッセージもあり。

配布物

おまけ:MTT柄のエプロン

シンフォニー・ストアにMTT柄のエプロンを発見。スタッフもつけていました。

エプロン
これを着ければ、繊細な(細かいことが気になる?)料理が作れるかも。
(注)MTTは自分で食事を作って生活している。

(2011.9.7)

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